最近の税関検査では自主検査に基づく修正申告を強化しており、技術使用料、商標権などの非貿易送金に対する調査にもそれが適用されています。ここでは、最近の中国某地区における税関調査の実例を紹介します。

 

X市税関検査科は、228日において20154月から20183月までの3年間における知的財産使用料に関して3月末までに自主検査を行い、必要に応じて修正申告を行うよう通知をしました。これは、管轄内の輸出入及び非貿易送金が相応に多い企業170社に通告されたようです。

 

自主検査関連に関連する根拠規定は下記のとおりです。

 

・税関検査条例 第26条第2

「輸出入貨物に直接関係する企業が、主体的に税関に対して税関管理規定に違反する事項を報告する場合において、税関がこれを受理し処理した場合には、行政処罰を軽減する」

・税関検査条例実施弁法(税関総署令2016230号) 第27

「税関管理規定に違反し主体的に報告する輸出入企業に対して、税関は行政処罰を軽減し、違法行為に対しては軽微かつ適時に更正し、危害のない事項には行政処罰を行わない。主体的に報告し修正申告・納税した企業には、税関は滞納金を免除する」

・輸出入貨物関税価格弁法(税関総署令2014213号)第5

「輸入貨物の関税価格とは、税関が当該貨物の取引価格を基礎として審査・確定するものであり、貨物の輸入までに掛かる輸送費及びその他の関連費用、保険費を含む」

・同弁法 第113

「取引価格に基礎として関税価格を審査・確定するにおいては、当該貨物の支払額に下記の費用が含まれていない場合は、当該費用を関税価格に含む。

-  買方が売方或いは売方の関連者に直接または間接的に支払う知的財産使用料。但し、下記のいずれかに該当するものを除く

1. 当該貨物と無関係な知的財産使用料

2. 当該貨物の中国内販売の条件を構成しない知的財産使用料」

・同弁法 第13

「下記条件の一に該当する知的財産使用料は輸入貨物に関係あるものとする。

.知的財産使用料が特許権及び技術使用権に対する支払であり且つ輸入貨物が下記の一に該当する場合

(a)特許或いは専有技術を含む場合

(b) 特許方法或いは専有技術を用いて生産する場合

(c)専ら特許或いは専有技術の実施のための設計或いは製造である場合

2.知的財産使用料が商標権の支払であり且つ輸入貨物が下記の一に該当する場合

(a)商標が付されている場合

(b)輸入後に商標権を付して直接販売できる場合

(c)輸入時に商標権を含んでおり、軽度の加工後に商標権を付して販売できる場合」

 

これらの規定から、知的財産使用料が、輸入貨物と無関係であること、或いは当該使用料の支払が輸入貨物(当該輸入貨物を用いて生産する生産物を含む)の国内販売の条件ではないこと、を輸入者が立証しなければならず、それができない場合には税関が当該知的財産使用料を輸入価格の一部とみなすことができる、という規定ぶりになっています。

 

ここで問題となりそうな使用料は、「生産技術に対する対価」たる知的財産使用料です。税関から見れば生産に関連する技術は全て対象とみてくるでしょうが、ここは本筋に戻り、“輸入貨物と関係ある知的財産かどうか“を自主判断することが必要です。例えば、本社及び第三者から材料を輸入しており、本社に生産技術の対価を支払う場合では、第三者から輸入する材料に関する部分に関しては、相当する当該技術の対価は輸入価格を構成しない、と主張することができるでしょう。また、そもそもアルミインゴットなどの素材原料から消費者向け製品を生産するような、加工度合いの大きな輸入原料である場合には、当該生産技術使用料は輸入品と無関係と判断することもできます。

一方で、コアとなる部品を輸入し、その他の素材を中国内で調達し最終製品を生産するようなケースにおいては、生産技術の対価が輸入部品の関税価格を構成すると判断される可能性が高くなります。

 

商標権に関しては、“中国内販売の条件を構成しない”知的財産使用料は、関税価格を構成しないこととされますから、商標権使用料の計算が生産品全部を対象としてx%と計算されるような場合において、その中に輸出品が含まれている場合には、関税価格を構成しない使用料と判断することができます。

 

自主検査の様式は下記のようなものです。

 

1非貿易送金一覧表

 

まずは、非貿易送金の全体を当該表で把握します。

 

2知的財産使用料一覧表

 

次にこのうち、販売コミッション、立替費用など知的財産に関係しない送金を除き、知的財産に関係する送金項目を当該表に記載します。

ここでは、「輸入貨物に関係するか否か」の質問欄がありますので、関係する場合には「有」、関係しない場合には「否」と記入します。

 

3知的財産権を含む輸入部材一覧表

 

 

次に、「輸入貨物に関係する」とした輸入部材につき、その一覧表を記入します。

輸入部材の他にも、「設計、開発等に関係する費用一覧表」「輸入設備に関係する費用一覧表」「その他輸入貨物に関係する費用一覧表」が別途あり、該当する場合はそれぞれ記入します。

 

4) 自主申告報告表

最後に自主申告の状況を文章にまとめ、報告します。

 

判断に悩むのは、「自主検査の結果全く問題なかった」と報告してよいかどうかということでしょう。税関は170社の自主申告の結果、十分な成果が上がったと判断すれば正式調査を敢えてするインセンティブはなくなる一方、不十分と判断した場合には、無修正申告の会社をターゲットに調査対象を選定するのではないか、という懸念があるからです。

ここでは、その懸念はない、とはいいきれません。従って、この手の調査では申告修正がないとするには相応の根拠(十分に立証できること)を以って行うことが肝要であり、それが叶わないようであれば、立証ができない、疑念の残る輸入取引については、ある程度の修正申告を自主的に行うことも現実的な対応として許容しうるところです。

自主修正の後、毎年関税の納税が必要かどうかは対応の分かれるところです。税関の調査は数年に一回行われているようであり、事後の追跡調査を行なっている形跡は今のところなく、一回限りの対応として納税を済ませている会社もあります。

しかしながら、一回自主申告した場合に、税関から未納を指摘された場合には、滞納金や行政処罰の可能性があることは認識しておくべきでしょう。

 

今後とも税関の知的財産使用料に対する調査は断続的にあるものと推測されますから、その場限りではなく、契約書の書きぶりを見直すなど、今後に向けたそれなりの対応が必要となることは肝に銘じておきましょう。