中華人民共和国第十三届全国人民代表大会常務委員会第五回会議において、2018831日付けで「中華人民共和国個人所得税法改正」に関する全国人民代表大会常務委員会による決定が行われました。

 

当該改正は201911日から施行となり、一部は2018101日から実施されます。

 

居住者の定義変更

「中国国内に住所を有する、或いは住所を有しないが一納税年度内において中国国内の居留期間が183日以上となった場合、居住者とする。居住者は中国国内及び国外所得において本法規に基づき個人所得税を納付する。

中国国内に住所を有せず且つ非居住、あるいは住所を有せず、一納税年度内において中国国内の居留期間が183日未満の個人は非居住者とする。非居住者は中国国内で取得した所得は本法規に基づき個人所得税を納付する。

納税年度は暦年で11日から1231日までとする。」

 

本規定では、外国籍人員が暦年で連続30日以上、または累計で90日以上の中国国外勤務がある場合(但し5年以下の場合)において中国国内所得のみに課税する、いわゆる5年ルールが規定されていません。国外所得申告の要否については、今後の追加規定と実務を注視する必要があります。

また、以前は183日以上、275日未満であれば中国での滞在期間に応じて各月、日割りで個人所得税を計算していたものが、2019年以降は日割りせずに全所得に対して課税されます。

 

課税所得分類

(一)賃金、給与所得

(二)役務報酬所得

(三)原稿料所得

(四)ライセンス料所得

(五)経営所得(個人事業主などの取得)

(六)利息、配当所得

(七)財産賃貸所得

(八)財産譲渡所得

(九)臨時所得

「居住者は前項の第一項から第四項の所得(以下、総合所得)において、納税年度において合算し個人所得税を計算する。非居住者は前項の第一項から第四項の所得において、月次あるいはその都度個別に個人所得税を計算する。納税者が取得した第五項から第九項の取得は本規定に基づき個別に個人所得税を計算する。」

 

上記の改定により、「総合所得」という呼び名が採用され、給与・賃金と分けて個別に個人所得税計算されていたその他3つの取得が合算されることになります。例えば、雇用契約のある会社からは給与、臨時で働く会社からは役務収入を得て節税する方法は使用不可となります。

 

税率の改定

(一)総合所得、3%から45%の累進税率とする。

(二)経営所得、5%から35%の累進税率とする。

(三)利息、配当所得、財産賃貸所得、財産譲渡所得、臨時所得の税率は20%とする。

 

これまで5つに分類されていた課税所得が3つに整理され、特に前述の2条改定により、役務報酬収入、原稿料収入、ライセンス収入が賃金・給与と統合され総合所得となり、税額計算はそれらの所得を合算して行われます。

 

総合所得と経営所得の課税所得額に対する税率は以下の表と通りとなります。

 

個人所得税税率表一(総合所得適用)

級数

全年度課税所得額(月額ベース)

税率(%)

1

36000元未満3000元未満)

3

2

36000144000300012000

10

3

1440003000001200025000

20

4

3000004200002500035000

25

5

4200006600003500055000

30

6

6600009600005500080000

35

7

960000元以上80000元以上)

45

 

月次の個人所得税の計算、申告は上記の表の月額ベースの金額に対して適用税率を算定し、毎月の申告納付を行い、年度末に確定申告を行うことで一課税年度の課税額を確定させることになります。

 

税率区分としては、25%の適用区分がこれまでの月9000元から月25000元以上となったことから、20%以下の低税率が適用される範囲が広がったといえるでしょう。

 

基礎控除は年間6万元、月額では5千元となり、これは外国籍人員に対しても適用されます。これまで外国籍人員に適用されていた月1300元の付加控除がなくなります。

 

変更の影響

 

規定では、控除項目として、子女教育支出、自身の継続教育支出、重病治療支出、住宅ローン利息、住宅賃貸支出、扶養支出があげられており、詳細は追加規定で明らかになる予定です。したがって、外国籍人員の借上住宅家賃を個人所得としない現行規定は継続されると見込まれています。

 

年一回の賞与支給に対しては、賞与額を12か月で除して適用税率を計算する現行規定がどうなるか、追加規定を注視する必要があります。廃止となると、賞与支給月の適用税率のみ高くなってしまいますので、中国籍人員に対しても影響が大きいからです。

 

今回の変更で、都市部就労者における所得税納税者の割合が44%から15%に下がり、月2万元以下の給与所得者の納税額はおよそ半分になると試算されています。全体的にみて低所得者への優遇となっており、また内外平等の国際課税ルールに沿った改定であると公表されていますので、今後の追加規定もこの方向性に沿ったものと想定されます。