中国拠点を運営していく上で必要となるが「組織化」と「オーナーシップ」です。組織化できてない会社は継続的に発展することが難しく、また組織の個々人がオーナーシップ(自分の業務に対する責任感)を自覚していなければ早晩組織は立ち行かなくなります。両者をバランスよく構築できた企業がこれから中国市場で生き残ることでしょう。本連載では組織化する上で重要な内部統制仕組み作りと、そこで働く従業員の「オーナーシップ」をどのように作り上げていくかを考えてみたいと思います

内部統制の仕組み作りとは、「業務の有効性及び効率性」、「財務報告書の信頼性」、「事業活動に関わる法令等の遵守」並びに「資産の保全」を合理的に保証する仕組み作りです。会社を効率的に運営することに主眼をおいて考えると、内部統制の構築はその基礎作りだとえいます。

また、業務を行う個々人が担当業務に対してオーナーシップ意識を持っていなければ、内部統制の仕組みを作っても「仏作って魂入れず」になってしまいます。従業員に責任を持って業務をやってもらう「動機づけ」は、組織の継続に欠かせない要素です。

本題に入ります。今回から数回にわたり、年度末決算におけるチェックポイントをテーマに取り上げます。第一回は、「棚卸資産」の評価です。

棚卸資産の評価における重要ポイントは、「実地棚卸」の正確な実施とその検証の体制の構築です。実地棚卸では計画段階から検証及び改善段階まで下記の点に配慮した「実地棚卸マニュアル」の作成が必須です。

①.  実施棚卸マニュアルが作成されているか。

②.  実地棚卸は実施棚卸マニュアルに基づき計画性をもって定期的に実施されているか。

③.  実施に先立って、実施上の段取り、分担が明確に定められているか。

④.  棚卸の参加者は棚卸の目的、方法、要領について熟知しているか

⑤.  実地棚卸の実施は適切に行われているか。

⑥.  実地棚卸による残高と帳簿残高との照合、両者に差異が生じたものについては、どのような方法でどの程度まで原因が追及されているか

⑦.  差異については原因追及結果に基づいて、所定の手続きを経てどのような方法で、どの時点での修正処理が実施されているか

⑧.  実地棚卸の結果について、事後に評価・フォローアップが行われ、以後の棚卸資産管理に反映される仕組で運営されているか

「実地棚卸マニュアル」は、購買・物流・倉庫・経理担当者のみならず一般の従業員も理解できる、実施場所、棚卸対象品(委託加工品、通関中在庫、積送中在庫、品質検査中在庫、破棄予定在庫なども含む)、実施月日、実施時間などが具体的に記載されているものであることが望まれます。

実際に在庫をカウントするのが現場の従業員である場合、事前に在庫(類似の部品が多い場合など)の写真などを準備するとカウントミスが減ります。棚卸が終了し結果の集計が出たら、下記の点に注意し分析・精査を行いましょう。

l   帳簿残高と現物との差異

l   倉庫への最終入庫日

l   12月の製造原価の確認(実際原価を月次で採用している場合) 

棚卸数量が出揃ったら、まずは在庫の帳簿残高と現物数量との差異を確認します。事前に経験値からくる差異の許容範囲(数量或いは金額)を設定しておき、それを越える差異があれば、原因を分析、究明しましょう。安易に棚卸差損と処理するのは禁物です。原因が特定できない場合は、再度の棚卸も厭わず行うことをお勧めします。逆に、棚卸差異が全く生じない在庫がある場合も要注意です。棚卸がおざなりに行われているかもしれませんし、棚卸に合わせて倉庫担当者が生産現場に出庫伝票を発行し辻褄をあわせている可能性もあります。この場合は製造現場にしわ寄せがいき、現場在庫の棚卸差損が大きくなり、実際原価で原価計算を行なっている場合は12月の月次の製造原価が他の月に比べて割高になってしまいます。倉庫だけではなく製造現場の棚卸数量、製造原価の変動等を総合的に加味して分析しましょう。

年末棚卸の徹底には、各部門と取引先を巻き込むことが必要です。11月末までには各部門の担当者に実地棚卸マニュアルの説明を行い、棚卸実施各部門の責任者を任命しましょう。担当部門の責任の所在を明確にすることで、棚卸業務に対する責任感が芽生えます。

仕入先には11月中に、12月の最終入庫日(カットオフ日)を通知しましょう。カットオフ日には購買物流部門の立合いのもと、仕入先から搬入された品物が発注書通りか確認しましょう。総コストに占める輸送費の割合が高い中国では、中小運輸業者は、効率化のために注文数量よりも多い、或いは将来発注予定の品物をまとめて搬入することがあるからです。

実地棚卸日は、担当者任せにはせず、購買、物流、経理責任者はもとより総経理も参加し実際に「現物」を確認しましょう。年末棚卸は文字通り年度末に行われますので正月に日本に帰国する駐在員も多いと思いますが、中国での出向期間はぐっとこらえて棚卸に参加しましょう。事前に総経理も棚卸に参加し、棚卸の要領チェック、棚卸カードを確認することを各部門の担当者に通知しておくと彼らの真剣度も増すことでしょう。また、総経理が参加することにより、実地棚卸が会社にとって最重要事項であるとの認識が従業員にも芽生えます。 

また棚卸と同時に、意識して在庫の状況を観察すれば、製造工程の無駄や脆弱な保管体制などが見えてくることでしょう。義務的に棚卸を行うだけでは改善のアイデアも生まれません。購買、物流、倉庫、製造の個々人にオーナーシップがあってこそ現場から改善意見が出てこようというものですし、それを拾い上げようという意思が経営者にあるからこそ、その意見が生きることになります。

ここまで実地棚卸を徹底すると、日頃の購買物流管理、倉庫管理、帳簿管理、現物受渡管理において看過されてきた問題が浮き彫りになりますので、部門間の利害の衝突と責任のなすりつけ合いが起こります。矛盾をどのように解消し、建設的な発展につなげるかは、「組織化」と「オーナーシップ」継続の条件であり、総経理の腕のみせどころです。