仕入増値税の前倒還付による資金負担軽減政策

 

2019320日に公布された公告(201939号では、増値税率の引き下げに注目が集まってはいるが、仕入増値税の資金負担を軽減するための前倒し還付制度を見逃してはならないだろう。

主に中国国内販売に従事する販売法人、製造法人で、仕入が売りに先行する場合、一時的に仕入増値税を負担することになるが、それが長期に亘り多額となる場合には資金負担がばかにならない。本政策では20193月末の仕入増値税残高(売上増値税と未控除の税額)を基準未控除増値税残高とし、連続6ヶ月の間、未控除増値税残高が一貫して増加しており(減少する月があるということはその後売上増値税と相殺できる可能性が高いので)、6ヶ月後の未控除増値税残高が基準未控除増値税残高より50万元以上超過している場合に、基準未控除増値税残高を超える額の一定割合を還付する、というものである。

この他の条件としては、納税信用等級がA級またはB級であること、還付申告前の36ヶ月において脱税等の違反がないこと、がある。

また、基準日以降に設立された法人の基準未控除増値税残高は、ゼロ、とみなす。

 

簡単な例でいうと、3月末の未控除増値税額が36万元で、9月末に90万元となった場合には、54万元の残高増加がみられることから、当該54万元の60%を還付するということである。計算式は以下のようになる、

 

還付税額=基準未控除増値税残高超過額×一般仕入増値税比率×60

 

ここで、一般仕入増値税比率とあるのは、仕入増値税全体に占める、専用発票増値税額、税関発行輸入増値税額等の割合を指す。普通発票や輸送費用などみなし計算で控除する部分は還付の対象としない、という意味であるが、多くの場合は100%に近いものとなろう。したがって、実質的には仕入増値税の60%が還付される、と考えてよい。

 

また、一度還付申請をした法人は、翌月から再度6ヶ月連続計算をすることとされる。したがって、還付申請できるのは多くても一年で二回までである。

 

輸出型の製造法人では、増値税の「免税、控除、還付(免抵退)」方式が適用されている。おさらいをしておくと、製品の輸出販売と国内販売がある製造法人では、“免”=輸出には増値税がかからないが、輸出製品の製造のために購入した仕入増値税を切り分けて還付することはせず、“抵”=国内製品の製造のために購入した仕入増値税と合算して国内販売の売上増値税と控除し、その後、“退”=引ききれなかった額を還付する、というものだ。計算式でいうと、

 

当月納税額=当月売上増値税額-(当月仕入増値税額-仕入控除できない仕入税額)-前月未控除増値税額

 

仕入控除できない仕入増額=当月輸出額×(標準適用税率-還付税率)

 

で、当月納税額がマイナスとなる場合には、還付限度額(=当月輸出額×還付税率)を上限として、当該金額を還付する。

 

還付額を差し引いた残りが、月末未控除増値税額となり、この免抵退制度が適用される法人でも同じく、月末未控除増値税額が6ヶ月連続して増加し、基準未控除増値税額より50万元以上となれば、輸出還付とは別に、この仕入増値税前倒還付制度の適用を申請することができる。

 

その他優遇制度の関係でいうと、2021年末まで適用される、現代サービス業、金融業、電信業で仕入増値税の10%割増控除政策があるが、当該制度で還付を受ける場合は、割増で還付を受けることはできず、また以後の仕入増値税額に、控除対象となった仕入増値税額の10%割増分を加算することもできない。これは当然といえば当然の規定だろう。

 

資金負担の軽減は、電気、通信などインフラを担う巨大企業の資金負担を和らげることが主眼とされる。資金的な余裕が、経営の改善や消費者へのコスト転嫁の軽減に繋がるなら、税制が経済に良い影響を与えることになろう。経済活動に中立であるのが良い税制だと教わったが、これは制度設計として無理のない、良い税制なのではないかと思う。